ビールの苦味を表す数値である「IBU」について紹介します。
IBU(International Bitterness Units)
IBUとは、International Bitterness Units(国際苦味単位)の略で、ビールの苦味を数値で表すための単位です。
ビールは苦い飲み物、というのは共通認識だと思いますが、苦味を強く感じるものもあれば、あまり感じないものもあります。
同じビールでも、飲む人によって感じ方が違ったり、飲む日によって感じ方が変わることもあります。
ビールの苦味の感じ方は、個人差や環境に左右されることがありそうですが、実は、主観ではなく客観的な数値でビールの苦味の強さを表す単位があるのです。
IBUについて解説
IBUってどんな数値?
IBUは、通常、0〜100の範囲で表される数値です。
日本国内の普通のビール(大手メーカーの主力製品)のIBUは、20前後です。
日本のビールに慣れてる人の感覚で、ざっくりとした目安としては、
- 10前後だと、苦くないビール
- 20〜30くらいだと、普通の苦さ
- 40〜だと、まぁまぁ苦く感じる
- 60〜だと、すごく苦いビール
くらいの感覚だと思います。
80〜、90〜くらいになるとめちゃくちゃ苦いと思われますが、ちょっと入手困難なレベルのビールかもしれません。
算出方法は?
ビールの苦味は、原料の一つである「ホップ」によってもたらされています。
ホップは、苦味だけでなく香りも付与するもので、ビールがビールらしい味わいになるのはホップのおかげと言えます。
このホップという植物の中に含まれる「アルファ酸」という成分が、醸造過程で変化して「イソアルファ酸」になり、これが苦味の元です。
IBUは、このイソアルファ酸の含まれる割合を表します。
なので、IBUが高いビールというのは、
- ホップをたくさん使っている
- (イソアルファ酸の元となる)アルファ酸を多く含むホップ品種を使っている
- ホップの煮込み時間が長い等、アルファ酸の抽出量が多い醸造方法である
といった条件を満たしていると言えます。
具体的な製品で事例紹介
当店メニューにある中で、皆さんがよく知っているビールのIBUがどれくらいなのか、可能な範囲で調べてみました。
ただ、メーカー公式サイトなどの製品情報の中にIBUが明記してあることは少ないので、情報源が個人ブログのようなものだった場合もありまして、あくまで参考データとしてご覧ください。
国内大手メーカー
- キリン 一番搾り:21
- キリン ラガー:25
- サッボロ 黒ラベル:21
- サッボロ ヱビスビール:25
- アサヒ スーパードライ:16
国内クラフトビール
ヤッホーブルーイング
- よなよなエール(ペールエール):41
- インドの青鬼(IPA):60〜62
- 水曜日のネコ(ベルジャンホワイト):11
- 僕ビール君ビール(セゾン):23
その他 国内クラフトビール
- ISEKADO ペールエール:35
- COEDO 毬花(セッションIPA):40
海外ビール(50音順)
- ギネス・エクストラスタウト:47
- グースIPA:55
- サミュエルアダムス・ボストンラガー:30
- シエラネバダ ペールエール:38
- シエラネバダ ヘイジーリトルシング:35〜40
- バドワイザー:10
- パンクIPA:35〜45
- ピルスナーウルケル:35〜40
- ヒューガルデンホワイト:9〜13
- ブルームーン:9
- ブルックリンラガー:33
- ラグニタス IPA:51
- ラグニタス マキシマス:60〜65
IBUの大小だけでは判断できない場合も
ここまでの説明を覆すようで恐縮ですが、IBUだけではビールの苦味は判断できません。
ビールの苦味の「感じ方」は、IBU以外の要素も影響があるからです。
よく言われるのが、麦芽の量。
麦芽が多い(コクのある重めの)ビールだと、苦味を感じづらいと言われます。
バランスよく造られた味わいのしっかりしたビールは、それほど苦味が気にならないと思いますが、IBUの数値だけ見ると、けっこう高かったりします。
逆に、薄味のビールがあったとして、苦味以外の味わいが希薄なビールだったら、IBUの数値は低くても、なんだか苦いなぁ、と感じるビールになるかもしれません。
アルコール度数や甘み、香り、副原料からもたらされる味わいの影響で、IBUの数値以上に、苦く感じたり、苦くは感じなかったり、といったことが起こりえます。
ビールの味わいとは、一つの数値で測れるほど単純ではなく、総合的なバランスの上で成り立っている、ということだと思いますし、
そして、人間の味覚は、数値で表現できるほど単純ではない、ってことですね。
……だったらIBUなんて意味ないじゃん!
という声が聞こえてきそうですが(笑)、そのへんがビールの面白さでもあり、また、IBUについて知っているかどうかで、ビールの楽しみも変わってくると思うんです。
特にクラフトビールで、IPAを好んで飲むような場面では、「このビールはIBUがいくつだから…」という会話をすることも多いです。
IBUがビール選びの参考になりますし、IBUの数値の割には苦味がマイルドだな、とか、クラフトビールの造り手が何を考えて醸造したのか、といったことまで想いを馳せて飲んでみたり。
今回紹介した内容が、ビールの楽しみの幅を広げる一助になれば幸いです。